2
「いいか、今日は、てめーのじゃねえ、オレの誕生日だ。 この間みたいなことしやがったら承知しねーからな」 褥に横たえられた時に、リクオは釘を刺した。
「この間」とは言うまでもなく、ひと月前の鴆の誕生日の夜のことを指している。 その夜の鴆は自分の誕生日を盾にとり、 リクオに散々恥ずかしい要求をしたあげく、縁側で獣のようにリクオを抱いて、しかも後始末もせずに寝てしまった。 翌朝、昼の姿にもどったリクオは、中も外も体液や潤滑剤でどろどろになった身体で、まったく腰が立たず、 おまけに鴆に抱かれて素っ裸で眠っているところを、様子を見に来た蛙の番頭に見られるという、 生涯忘れられない経験をした。
先手をとられて鴆は鼻白んだが、すぐに気を取り直してニッと笑った。 男っぽい、野性的な表情だが、鴆がこんな顔をする時には大抵ろくでもないことを考えている。 リクオは身構えた。 「なら、今日はあんたがどうしたいのか言ってくれよ」 提案は、意外にも普通に思えて。リクオはほっと身体の力を抜いた。 褥に横たわった襦袢姿のリクオに、覆いかぶさるように手をついたまま、鴆はどうしてほしい、と尋ねてくる。 リクオは目元を染めながら、いつも通りでいい、と答えた。 具体的にあれこれ言うのは、自分から行為をねだるようで恥ずかしい。 ところが。 「いつも通りって?」 鴆は覆いかぶさったまま動こうとしない。 リクオは呆然と鴆を見上げた。 「口吸いか?どこかに触れてほしいのか? 言ってくれなきゃわかんねえな」 意地悪くうそぶく鴆の言葉に、リクオはようやく意図を悟る。 「てめえ・・・」 鴆は一見神妙な表情でリクオの答えを待っていたが、緑の目は愉快そうにきらきらと輝いていた。 リクオは物騒な目で鴆を睨み上げたが、憎らしい相手はびくともしない。 いっそ何もするなと言ってやろうかと思った。 でも身体はすでに行為を期待して、鴆を欲しがってしまっている。 リクオは唇を噛みしめ、小さな声で接吻をねだった。 そうしてようやく唇が与えられたが、 何度も軽く触れるばかりで、一向に先に進もうとしない。 焦れたリクオは、鴆の首の後ろに両腕を回して引き寄せ、自分から舌を入れて絡ませた。 いつも鴆がしているように歯列をなぞり、舌の根元に溜まっているエキスを啜り、舌に自分の舌を絡ませて強く吸った。 熱く湿った粘膜同士の触れ合いに夢中になっているうちに、無意識に腰が揺れる。 接吻だけではとても足りなかった。 「次はどうして欲しい?」 なおも聞いてくる鴆に、触れよ、と呟いた。 大きな手が、襦袢の手触りを確かめるように触れてくる。 布越しに胸やわき腹をまさぐる感触がもどかしくて、リクオは骨ばった手を掴んで胸の合わせ目に潜り込ませた。 乾いた手のひらがリクオに促されるままに、直になだらかな胸を撫でる。 時折胸の頂をかすめる度に、リクオの身体は小さく跳ねた。 だが、大きな手はただ円を描くように撫でるだけだ。 「どうして欲しいのか、言わなきゃずっとこのままだぜ?」 意地悪く促す鴆の言葉に、リクオは羞恥に消え入りそうな声で、乳首、と口にした。 「乳首?」 「いつもみたいに…つまんだり、引っ張ったり…」 「こうか?」 「あっ…ん」 ようやく求めていた場所に刺激を与えられて、リクオは思わず嬌声をあげた。 「あっ…もっと強く…ッ」 もう一方の手も乳首に導きながら、リクオがねだる。 「もっと虐めていいのか?やらしいな、リクオは」 揶揄する声に、羞恥で消えてしまいたくなる。 だけど、すっかり堅くなったそこを虐められると、羞恥を上回る快感が電流のように背筋を走った。 「手だけでいいのか?」 耳元でそそのかす男の声に、口での愛撫をねだる。 「あっ…もっと…!」 もっと強く吸って、噛んで欲しい。 リクオに言われるままに、鴆は固くなっている乳首を交互に口に含み、もう片方を指で虐めた。 愛撫に慣れた小さな果実を、痛みを感じるほど虐めれば虐めるほど、リクオは甘い声で啼いた。 「他には?」 片方の乳首を口に含んだまま、鴆がさらに問う。 触れて欲しい部分は他にもあったが、これ以上の要求は、とても恥ずかしく口に出せない。 リクオはぎゅっと目をつぶり、とうとう観念して言った。 「もう…っ、おまえの、好きにしろ…っ」 鴆は得たりと笑って、 「任せとけっ、三代目!」 待ってましたとばかりに、乱れた裾の間から内腿へと手のひらを潜り込ませた。
|
||